第22回 8粒の豆

 

第22回 8粒の豆

 

 スーパーマーケットなんかで普通に売っているかぼちゃ。
最近は1/4カットでラップにピッタリ包まれていることが多いあのかぼちゃを料理するときに、スプーンでワタとタネをこそぐように取って、普通は捨ててしまうその部分をすすいでワタを落とし、たねを取り出す。そのタネを小さなベランダのプランターの土に埋めてしばらくおくと、芽が出てくるんですよ!
これがかわいいっ!もうびっくりするほど、絵に描いたような双葉が出てくる。それも結構肉厚な、しっかりした葉っぱが出てくる。
 あるとき土に埋めたはずのタネが、あれっ土の上に顔を出している。数日してそのタネの白い殻が割れて緑色が出てくる。ちょうど蛹から出てきた蝶のクシュっとたたまれていた羽が広がるように、緑の葉っぱが広がり始めて、両側にリボンのような葉、が広がる。双葉。もう、かわいくってかわいくってきゅん。
 3枚目の葉は丸っこい形で伸びてくる。ベランダではカボチャになるまではいかないけれど、勢いよく元気よく伸びる葉に目を奪われて日々その姿を愛でる。黄色い花が咲くのもすごくかわいい。これが普通に売ってるカボチャの捨てちゃうタネからできたんだと思うとさらにきゅんきゅんする。

 みんなからは「食べられるんですか?」と必ずと言っていいほど聞かれる。
観葉植物でいいじゃない、って思うけど、確かに葉っぱの様子も美味しそうな気がする。刻んで味噌汁に入れる、茹でてごま油と少しのスープの素か昆布茶と塩で和えてナムル、さっと衣をつけて天ぷら、など。黄色い花の天ぷらもいける。
タネまき、これけっこうハマります。芽が出るってすごい、小さな、でも確実な自然の力に驚かされる、励まされる。

 

 昨日は、私の小さなベランダでグリンピースを収穫した。
これまたスーパーの棚に出てき始めのサヤ付きグリンピースを買ってきて、料理して少し残ったものを冷蔵庫にしばらくおいてからサヤを開けると、緑の豆に白い髭のような根が一本伸びている。これをコットンをしいた皿におき、水をはっておくとこれまた小さな葉が出て伸びてくる。それをプランターに植え替えるとツルがあちこちに捕まってのびて、いつの間にか白い花が咲く。それから萎れてサヤの形ができて、そして膨らんでくる。売っているグリンピースと比べたらずっと小さいサヤ。豆は2粒づつ入りのその豆を出して、水加減した米の上に置いて一緒に炊く。米2合にたった8粒の豆ご飯が炊ける。ツヤツヤ白飯の表面に緑の水玉。
これが!夢のように美味しかった、鍋の蓋を開けてしゃもじで豆と周りのご飯粒ごと掬って、手でつまんで食べる。わああああああおいしい!こんなにおいしいもの、そうそう食べれるものじゃない。本気で、本気で思ったのだ。居合わせた友人もその美味しさに言葉を失っている、うーんうーんと唸っている。半分の4粒づつ食べる。

 

 なんだろう、この小さなベランダ生まれの、飛び抜けた<かわいい>や<おいしい>は。
感動があるのだ。心が動くってすごいことだなあと思うのだ。
8粒の豆は宝石みたいだった。

 

 

 

 

 

次回は、2022年6月中旬更新予定です。お楽しみに!