第3回 <夜のパン屋さん>はじめました。その1

 

 

第3回
<夜のパン屋さん>はじめました。その1

 

  夜の街の細い通り。シャッターの降りた店の軒先。ぽつんと電球の灯りがともっているその下に、パンが並べられている。ポツリポツリと仕事帰りの人がやってきては、ちょっと立ち話をしてパンを買ってゆく。<夜のパン屋さん>は最初、そんなイメージでした。

<夜のパン屋さん>は、エコデパのメルマガにも紹介していただいたように、企画とプロデユースを私が担当して始まったビッグイシューの新しいプロジェクトです。

 

 ホームレス状態にある人の自立支援のために、雑誌を街中で売る<仕事>作りがビッグ・イシューの仕組みです。もともとはロンドンが発祥。

 

 1冊450円の雑誌を売ると、その約半分の230円が売り上げとなって、販売者の収入になります。お金や物を渡して支援するのではなく、仕事をしてもらう、仕事を渡す。有限会社ビッグ・イシュー日本が雑誌を作って販売者に卸す、販売者さんはだから、言うなれば<個人商店で、会社と販売者はフラットな関係>と最初の頃に聞いて、感動したのを覚えています。また、その雑誌販売の仕事とは別に様々なサポートをする認定NPO法人<ビッグイシュー基金>があります。

 

 ビッグイシューに関わったのは、創刊してしばらくした頃にあったスローフード特集にインタビューしてもらったことがきっかけです。たまたま新聞でビッグイシューのことを知っていた私は、ボランティアで何か協力させてください、と申し出たのでした。実はこれが、自分からオファーした人生初の<営業>です。料理とエッセイのコーナーをいただいて、それが今では料理付き人生相談コーナーへと変遷し、途中、基金の理事を今度はオファーしていただき、今はなぜか共同代表というのを仰せつかってやっております。

 

 私、どう考えても個人行動屋なんです。思いつくといてもたってもいられず、ぴゃーっと走ってしまう困った性癖。組織に属したことがなく、就職試験さえ受けたことがありません。<バイト面接、劇団入団時を除く>だから、「共同代表って一体何をするんですかぁ?ムリですよ、ムリムリ」といった状態でした。でもその時にいただいた答えが、「好きなこと、やっていいです」だったような。<ほんまかな!?私の記憶>というわけで、今回の<夜のパン屋さん>が始まっちゃいました。

 

 いえ、一応大人ですから、そこは頑張りました。理由もあります。

発端は、ビッグイシューにいただいた篤志家の方からのご寄付です。寄付のご意向が、「ただ配って終わってしまうような使い方ではなく、なんらかの循環を生み出すような使いかたをしてください」というものでした。
さて困った。まず好きに使っていいお金ができちゃったわけです。どう使ったらいいものか、悩みました。

 

 パン職人を育てるのもレストランやカフェを営業するのも、常時誰かがいなくてはできないし、それは自分の仕事を抱える私にはムリ。それにそもそも世の中にはすでに、美味しいカフェもレストランもパン屋さんもたくさんある。

 

 でも、パン屋さんの閉店時に残るかもしれないパンたちを引き受けて、夜に再販させていただくというのならできるんじゃないのか?

 この仕組みを教えてくれた十勝生まれの友人がおりました。北海道帯広の地で、地元民に愛される<満寿屋>さんというパン屋さんが、経営する6店舗のパンを集めて夜だけ再販するパン屋さんをしている、というのです。

 その仕組みなら、ビッグイシューの販売者さんにパンのピックアップをしてもらえば仕事作りにもなるし、いける!できる!私の頭の中、ちょっと湧きました!そんなわけで、人生2度目の<営業>、あちこちのパン屋さんを巡って参加をお願いしまくり、<夜のパン屋さん>が始まったのでした。

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

次回は、11月中旬更新予定です。お楽しみに!