第14回 速読と速攻料理

 

第14回 速読と速攻料理

 

 

 コロナ禍、続いてますね。
心配しつつも、一体どうしたらよいものやら。途方に暮れてしまうような、でもどこか現実感がないような。それでも、デルタ株による爆発的な感染拡大で、周りに<陽性だった>とか、<入院できないまま自宅隔離で危うく死にかけた>なんていう人の話を聞くようになりました。胸を塞ぐような心配、いや違うかしら、もやもやと不確かなのに消えることなく続く不安、そんな感じでしょうか。
重症化を防ぐと言われるワクチン、さてどうしよう。病気持ちでしかも以前に強いお薬によるアナフィラキシー・ショック経験者の私は考え悩み、結局接種を控えることにしました。
そうなるともう、自分の免疫力をあげてひたすら気をつけて暮らすことに。幸い<幸い、とは言いかねる気もしますが、、、>1人暮らしで家から出ることも少ない身、なんとか自分の身を守っていこうとしております。でもね。あー旅にでたい、お買い物したい、外食したい、いろんな欲望がつのります。

 

 「コロナ下で自宅にいて、三食料理をしなくちゃいけなくて大変なんです。早くできる料理を考えてください。」という仕事の指令がきました。そうかあ。そうですよね、そりゃ大変です。でも待てよ、と私思い出したことがありました。

 

 

 速読、ってあるでしょう? すごいスピードで本を読むこと。私、読む速度も遅いし最後まで読みきれずに途中でほったらかしの積読にしがちです。だから速読、憧れました。賢くなれるんじゃないか、自分の今抱えている問題の答えがさくさく見つかるんじゃないか、そんなふうに期待した時に、速読を解説する人が言ったのでした。

 

「あのですね、たくさん本を読む人はやはり<読む>ことに慣れていく。急に降って沸いたように速読の技術が身に付くわけじゃなくて、本を読むことが好きでたくさん本を読むことで、そのうちに身についていくものなんじゃないかと思いますよ。」だそうで。うぅぅぅむ。速読を勧める人なのに、なぜかゆっくりと落ち着いた調子で語った言葉に、なるほどっ!と私、膝を打つような思いがしました。

 

 料理もそうだよなあ、と思ったからなんです。手際よく料理して手早く食卓を整える、素敵です。おヌシできるな、賢いな、という感じ。でもね、やっぱり手際よく料理することを支えるのはキッチンで過ごした時間の積み重ねなんじゃないのかな、と思ったわけです。
早くできる料理、もちろん考えます、仕事ですもん。早くできる料理はつまり簡単だったり、作りやすかったりするので、それで美味しかったら何度も繰り返して作ってもらえて、だから慣れてもらえる。そこがきっといいところですよね。
ただ、こうも思うわけです。なぜみんなそんなに忙しい忙しい、早く早く、になっちゃうんでしょう。
確かに子供たちのいるご家庭だったらやることが山盛り、自分の時間を確保するのは戦いにもなりそうです。
私だって、サクサクと物事が進む速読に憧れてます。知恵の扉、素敵な暮らしの扉がするすると開いていく。

 

 ここで再び、でもね。
今はコロナ下です。家にいる時間が増えました。だから家で料理を作る時間も増えましたよ、という方もいらっしゃる。便利に簡単にもっと早く早く、とせき立てられるような時間の捉え方から降りて、ゆっくりを楽しむ、怠け者でいることを楽しむ、そんなふうにシフトチェンジしてみるのはどうなんでしょう?
<家事>を<雑事>からなんとか解放したい。楽しいぱっかりじゃない、一筋縄ではいかないことを重々知りつつ思いつつ、今に手応えを感じながら考えながら、<楽しい>を見つけてキッチンにいることを少しでも好きになりたいなあ、と改めて思っているコロナ下でした。

 

この大変な時期が暮らし方を考え直すいい機会になりますように。
みなさま、どうぞお気をつけて。

 

 

 

 

 

 

次回は、2021年10月下旬更新予定です。お楽しみに!