川の浄化を考える
第12章 排水に関する法規制
わが国で公害に対する規制が法制化されたのは1960年代以降のことです。1967年には「公害対策基本法」が、1970年には「水質汚濁防止法」が成立しました。 水質汚濁防止法は企業の排水責任を問うものです。歴史的経緯から見ると、最初のうちは対象物質の排水中の濃度が規制されていましたが、現在では部分的に総量規制がしかれています。 しかしこの規制も十分なものではありません。指定されている水質項目が少なく、富栄養化の原因であるリンや窒素に対しても特定の場所で、ごく緩やかに規制されているに過ぎません。また、規制対象になっているのはカドニウムや六価クロムなど、過去に人体影響が問題になった物質だけです。今後は、すでに製造されていて人体への影響が予見できる物質すべてを規制対象にすることが望まれます。 近年の河川、湖沼、海湾の富栄養化現象は一向に改善されないので、1990年に水質汚濁防止法が改正され、生活排水に対する項目が加わりました。それまでの理念は水質汚濁は企業の責任ということにあったのですが、改正後は国民一人ひとりの責任が求められています。そういった意味では画期的な法律です。 この法律には生活排水についての国民の責務や自治体の責務、国の責務が盛り込まれていますが、よく考えてみますと私たちが一人ひとりの責任をまっとうしたくても、生きるためには排水を出さざるを得ません。きちんとした下水道や処理場、有効な排水処理装置を設置するためには、国や自治体の努力が先ですし、人口が密集していないところでは、リンや窒素まで有効に処理できる合併処理浄化槽の開発などの企業努力が必要です。 現在の規制は、経済成長を破綻させないための最低限の規制値です。水をきれいにする規制としては、リンと窒素の排出を規制し富栄養化を防ぐこと、工場廃水の工場内循環の奨励、自動車などからの燃焼起源物質の規制が有効と考えます。 環境庁は1991年秋に土壌の環境基準を告示し、その運用を各都道府県に通達しますが、土壌汚染も水質汚染につながることは明らかです。 現在、最も心配されていることは、産業廃棄物中の有害物質です。有害物質が土壌を汚染し、水に浸出するのです。処理費を安く抑えるために処理業者の不法投棄はあとを絶たず、有害物質が地下水や川を汚染しています。このような有害物質の毒性を熟知している排出企業自身が完全な処理をするような法律の改正が求められています。 わが国には「水に流す」という言葉がありますが、私たちの中には水に流しさえすれば、いずれはなくなるという意識があります。しかし実際には水域のみならず環境に有害物質を排出すれば、めぐりめぐって水域に入ってきて、その一部は人間のからだも汚染します。有害物質はできるだけ排出しないようにしたいものです。 前へ 次へ | 川の浄化に関する活動について 生活アートクラブは川の浄化をまじめに考えます 第1章 水と人間の関わり 第2章 水の大循環 第3章 海に囲まれている日本 第4章 水道水の浄化処理方法 第5章 日本の下水道について 第6章 下水道ものしり事典 第7章 最近の台所用合成洗剤 第8章 生活排水を汚す原因 第9章 環境への思いやり 第10章 洗剤による水汚染について 第11章 河川の水質汚濁防止方法 第12章 排水に関する法規制 第13章 生活に川をとりもどすために 第14章 川に流される大量の合成洗剤 第15章 危険な合成洗剤 第16章 台所用合成洗剤のゆくえ 第17章 合成洗剤や石けんの残留 第18章 石けんは環境や体にやさしい 第19章 界面活性剤の役割 第20章 化粧品に含まれる指定成分 第21章 合成洗剤についてのQ&A 第22章 竹が環境浄化に役立つ理由 第23章 美女の肌を守りつづけた炭 第24章 炭の浄化力 第25章 竹炭の材料になる竹の種類 第26章 竹炭の特徴について 第27章 今自分にできることを 第28章 地球はちょっと疲れてる 第29章 HPを立ち上げるきっかけ 第30章 愛 第31章 魚と合成洗剤 第32章 竹を見直そう! カンボジアの井戸掘り事業 |