川の浄化を考える
第10章 洗剤による水汚染について
1990年の家庭用洗剤の総販売量は約1640万トンです。 このうち合成洗剤は1090万トン(66.4%)陽イオン界面活性剤製剤は35万トン(21.4% 用途別には柔軟仕上げ剤28万トン、リンス5.6万トン、トリートメント1.7万トン)です。石けんは20万トン(12.3%)で、1人年間4.5キログラム、1日当りでは36.8グラムとなります。 このように、洗剤は各家庭から排出される最大の汚染化学物質です。特に最近の特徴は、総洗剤排出量のうち洗髪用が11%、陽イオン界面活性剤製剤が21.4%を占めるようになったこと、界面活性剤のうち陰イオン系のLASが50%以下に減少し、AFS、AOS、AS、AFSと多様化したこと、非イオン系のPOER(AE)、DAが増加してきたことです。これに陽イオン界面活性剤製剤が加わり、洗剤による環境汚染の様相は複雑になっています。
一方、柔軟仕上げ剤、リンス、トリートメントなどに陽イオン系界面活性剤の使用が激増しています。洗剤による環境汚染は増えていながら、メチレンブルー活性物質は激減して洗剤による環境汚染が改善されてきたような錯覚をおこしています。 また水中で発生するこのコンプレックスによる汚染の実態は、ごく限られた調査しかされていません。非イオン系界面活性剤の汚染の実態調査は、もっと限られています。 洗剤と柔軟仕上げ剤に使用される界面活性剤の多様化に対して、洗剤による環境汚染の実態を把握できる分析技術が遅れているのが実情です。 家庭から排出される界面活性剤の量は洗剤の20%として35万トン、工業用界面活性剤から50万トンです。家庭用排水は下水道普及率が40%で、除去率80%として11万トンが除去され、24万トンが環境へ排出されます。工業用排水処理で70%除去したものと仮定して、残り15万トンが環境に放出されますから、家庭用と合わせて39万トンの界面活性剤が環境を汚染していることになります。 洗剤汚染の特徴は、人が生活しているところからは、1日の休みもなく汚染水が排出されることです。分解が早いといっても、一番早いせっけんでも100ppmが完全に分解されるためには8日間かかり、最も難分解性の合成界面活性剤のLAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)では1ヵ月たっても50%しか分解されません。完全に分解されないうちに次の洗剤が環境に入ってきます。日本中の河川、内海、湖沼に洗剤汚染が進行しています。 下水処理場の界面活性剤の処理能力を実験した三島市と富士宮市のデータでは、下水処理場に合成洗剤(LAS)だけが流入すると活性汚泥の微生物生態を痛めますが、せっけんの比率が増え、石けんLASがおのおの1対1の量になり、さらに石けんが上回るようになると微生物相が変化し、洗剤の分解効率が向上し、処理水の水質が良くなることが共通してみられています。 当面の目標として、合成洗剤80万トン対石けん20万トンの現状を、合成洗剤を半分に減らし、石けんを倍にすることができれば洗剤による環境汚染は飛躍的に改善されます。 この10年間、石けんの消費量は減少傾向にあります。現在の石けん消費量は1990年には洗濯用で5.5%に落ち込んでいます。1980年は10.8%でしたから、この10年間に半減してしまったことになります。洗剤のすべてを石けんにすると石けんカス公害が発生するという問題点はありますが、合成洗剤を半分に減らし、石けんを倍にし、下水処理の普及することを提案します。 前へ 次へ | 川の浄化に関する活動について 生活アートクラブは川の浄化をまじめに考えます 第1章 水と人間の関わり 第2章 水の大循環 第3章 海に囲まれている日本 第4章 水道水の浄化処理方法 第5章 日本の下水道について 第6章 下水道ものしり事典 第7章 最近の台所用合成洗剤 第8章 生活排水を汚す原因 第9章 環境への思いやり 第10章 洗剤による水汚染について 第11章 河川の水質汚濁防止方法 第12章 排水に関する法規制 第13章 生活に川をとりもどすために 第14章 川に流される大量の合成洗剤 第15章 危険な合成洗剤 第16章 台所用合成洗剤のゆくえ 第17章 合成洗剤や石けんの残留 第18章 石けんは環境や体にやさしい 第19章 界面活性剤の役割 第20章 化粧品に含まれる指定成分 第21章 合成洗剤についてのQ&A 第22章 竹が環境浄化に役立つ理由 第23章 美女の肌を守りつづけた炭 第24章 炭の浄化力 第25章 竹炭の材料になる竹の種類 第26章 竹炭の特徴について 第27章 今自分にできることを 第28章 地球はちょっと疲れてる 第29章 HPを立ち上げるきっかけ 第30章 愛 第31章 魚と合成洗剤 第32章 竹を見直そう! カンボジアの井戸掘り事業 |