第31章 魚と合成洗剤

川や海に合成洗剤が流れるとどうなるかといいますと、魚というものは本来、危険なものからは逃げるという習性・本能があります。合成洗剤が流れれば本当に薄い。0.01ppmくらいの濃度であってもそこを避ける本質的な力があります。ところが川に大量に合成洗剤が流れる炉、逃げようにも逃げられなくなる。

その結果、魚はそれを食べてしまい、さらに水中にも残留してしまう。しかも合成界面活性剤で口の中がマヒして、魚が味を感じる力がなくなってしまうのです。すると、例えば水銀があっても食べないはずなのに、毒と毒でないものを見分ける力がなくなってしまう。こういうことが背景にあり、水俣病が発生したといわれています。

これは人間の場合でも、歯磨きしただけで同じ結果になります。歯磨き粉の中に合成界面活性剤が3%ほど含まれています。それで歯を2~3分磨くと、舌の表面に味を感じる未蕾(みらい)に合成界面活性剤が結合して残ってしまう。その結果、歯磨きした後お茶を飲んでも何か物を食べても味がわからなくなってしまうというわけです。

しばらく経てば回復することはするのですが、それが積み重なると微妙な味は感じられなくなって、辛いものも辛くなくなる。ですから激辛を求めるようになってしまうのです。小さい赤ちゃんは本当に味の薄いものでも感じるのですが、成長するにつれて歯磨きなどのせいで味音痴になり、非常に味の濃いものを求めるようになるといわれています。

◆ カルシウム石けんと合成化学物質

「環境ホルモン」で明白になってきたように、合成洗剤をはじめ、いわゆる合成化学物質というものの問題点が明らかになりつつあります。簡単に作れて洗浄力も合成洗剤よりもいい。手荒れもおこさない、そういう石けんの良さを改めて見直していく時期に来ているのではないでしょうか。

しかし、石けんは石けんカスができるからどうのこうのという批判があります。石けんカスとは水の中のカルシウムと石けんが結びついたものです。実は石けんカスができるから石けんはいいと、逆の理論が成り立つのです。洗濯している間は石けんで、川に流したらカルシウム石けんになって、これは魚のえさになってしまう。

太陽油脂では、わざわざこの石けんカス、つまりカルシウム石けんを工場で作っています。これは何のためかというと、鶏や牛の配合飼料に入れると、牛乳にカルシウム分が多くなったり卵が割れにくくなるからです。魚の養殖にも使われているようで、養殖場では鯛やひらめにこれを使うと元気に育つといいます。

合成洗剤にまみれて育ったほうは、奇形が生まれたり、だんだんオスがメス化したりするということも報告されています。使用後の石けんは、流れてすぐカルシウム石けんに変わり、微生物やミジンコや魚のえさになって全部なくなってしまうというわけです。

東京湾には何ppmという合成界面活性剤がいまだに残っているわけですが、せっけんはどこの川、どこの海を分析しても少しも出てきません。1ピコグラムも出てこない。

それは、石けんがすぐにカルシウム石けんになってすべて食べられてしまうからです。下水を廃水処理した結果も、全部分解されてしまって石けんという形では残りません。せっけんは作り方がごく簡単ですから、自然の循環でまたすぐ戻ってしまうのです。

合成界面活性剤のように非常に高温高圧の中でしか作れないものは、魚や自然界では分解できずにどこかに留まっていて、それがやがては人間に降りかかってくる。

その結果、30年前と比べて男性の精子はいまや半分に減ってしまったといわれています。もう30年経つとまた半分に減って、50年後には子孫は生まれなくなるかも、100年後には人類は絶滅するという説もあるくらいです。

今こそ合成洗剤を辞めて、昔からある自然の石けんを使いましょう。


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