第17章 合成洗剤や石けんの残留

毎日使う洗剤は、消費された後、そのまま全部の量がゴミとなって環境に廃棄されます。他の消費財やエネルギーのように消失したり、回収されることなく、全部の量がそのまま河川に流されるか、下水処理された後、放流されます。

実際の河川にはどの程度洗剤が残っているのでしょうか。多くの研究者が環境中の残留調査をしていますが、東京農工大の高田助教授は、多摩川の支流では1970年代、陰イオン界面活性剤濃度(MBAS濃度)は0.1ppm~0.2ppmだったのが、80年代には入ると1~2ppmにも上昇したと報告しています。各自治体の調査でも、0.1~8ppmと、非常に高い値を示している河川もあります。

濃度0.1ppmでもホタルは育つことが出来ません。1ppmだとメダカも棲めなくなります。

また、陰イオン界面活性剤の代表であるLAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)の残留も深刻です。東京湾の堆積物中のLAS濃度を測定すると、20~200ppmあったと報告されています。有明海でも3~8ppmの濃度が測定されています。

一方、石けんはどこの河川、海底でも測定されたことはありません。石けんは水中でカルシウム石けんとなり、生分解されてすぐなくなってしまうからです。

日本では現在、合成洗剤は年間90万トン使用され、ごみとして環境中に廃棄され、めぐりめぐって水道中に混入しています。

水道法では陰イオン界面活性剤(メチレンブルー活性物質)は0.5ppm以下でなければならないと定められていますが、浄水場で合成洗剤を完全に除去することは困難です。また、使用が増えている非イオン界面活性剤の基準は今のところありません。

0.5ppmという濃度は、ホタルが育たず、メダカの稚魚にも発育障害を与えるような水道水なのです。

参考)MBAS (メチレンブルー活性物質)は青色の陽イオンを持つ「メチレンブルー」が、石けんを除く陰イオン界面活性剤と結びついた複合体のこと。これを測定することによって、川や湖の水に含まれるLASやASなど、合成洗剤由来の陰イオン界面活性剤を検出することが出来ます。身近な河川の合成洗剤の濃度を測定するには「簡易測定キット」が販売されています。(合同出版教材事業部03-3294-3506)


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