第16章 台所用合成洗剤のゆくえ

湖沼や河川、湾内で水中のリンや窒素などの栄養塩の濃度が高くなり、植物プランクトンが増殖する現象を富栄養化といいます。富栄養化すると湖では水の華、アオコ、湾内では赤潮が発生して魚介類に死をもたらしたり、水道の水がかび臭くなったりします。原因は家庭雑排水、工場排水、畜産排水などが流れ込んだからです。

琵琶湖はかつて富栄養化が問題になった湖です。これを食い止めるため、1979年、「琵琶湖条例」(滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例)が作られ、滋賀県内で有リン合成洗剤の販売・使用の禁止をしたことは有名です。この条例と前後して、合成洗剤の助剤に使われていたリン酸塩はゼオライトに置き換えられ、無リン洗剤へと切り換わっていったのです。

この条例は、琵琶湖を守る粉石けん使用推進県民運動県連絡会議、合成洗剤研究会、合成洗剤追放を求める諸団体、婦人団体など各種団体の石けん運動の成果として評価されています。

しかし、合成洗剤は無リンになっただけで合成洗剤自体の生産・使用量は減少せず、LASなどの合成界面活性剤の水環境への放出は継続され、魚に対する影響のみならず、水道水中へも混入し、広範囲の水汚染を引き起こしています。

また、ボディーシャンプーや洗顔用にも、弱酸性製品と銘打ってアミノ酸系界面活性剤が使用され、これらに含まれた窒素による富栄養化が懸念されています。

また、「お口クチュクチュ」と宣伝されている洗口液には、リン酸塩が配合されており、環境重視の時代に逆行した企業姿勢といわざるを得ません。

(参考)洗濯用合成洗剤の助剤として配合されていたリン酸塩は、洗浄力をアップする働きをしていました。しかしリンは富栄養化を引き起こす為、ゼオライトに切り替わりました。これを無リン化といいます。


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川の浄化に関する活動について
生活アートクラブは川の浄化をまじめに考えます
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第10章 洗剤による水汚染について
第11章 河川の水質汚濁防止方法
第12章 排水に関する法規制
第13章 生活に川をとりもどすために
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第16章 台所用合成洗剤のゆくえ
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第32章 竹を見直そう!
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