第2章 水の大循環

水は暮らしや産業の中で使われ、やがて川や海へ注ぎ、蒸発して雲となり、空を駆け巡り、雨や雪となり、また地上へと帰ってくる。

私たちが出会う水はそんな大いなる循環の途中。

水は永遠の旅人である。

だから水を迎えてくれるはずの自然が失われたり、大切にする人がいなければ、水はその土地からすぐに立ち去ってしまうだろう。

また、水を汚す心無き人がいたら、その汚れはどこまでも運ばれて私たちの生活を著しく脅かす存在にもなりかねない。

1)水は地球上をどのように循環しているのか?

水は地球上を絶えず循環している。

その水の循環の主役を果たしている自然の仕組みは、蒸発散と降水である。

まず、大気中の水蒸気は雲となり、それが雨や雪などとして降ってくる。その降水の量は年間平均49.5万立方キロメートルで、その内訳は、海へ約38.5万立方キロメートル、陸地へ約11万立方キロメートルとなっている。

降った雨雪の85パーセントは海上から、人間が使用した水も含めて残りの15パーセントは陸上から、蒸発散して空へ戻るのである。なお、樹木の表面などからの蒸発を特に「蒸散」というが、ここでいう蒸発散は主に太陽エネルギーによるものなので、地球上の地域別の蒸発散量は、南北の緯度で30度以下の赤道地帯付近がもっとも大きくなる。

このように、地球全体としては、蒸発散と降水の収支はほぼバランスが保たれているという事になる。ただ、より細かく見ると、陸上では降水量の方が、逆に海上では蒸発量の方が、それぞれ約40万立方キロメートルずつ多くなっている。結局、陸上での降水は、このさに相当する量だけ大気中を経て、海から補給されているわけだ。逆にそれとほぼ同量の降水が、河川などを経て地表からの流出や地下水の滲出(にじみ出ること)というかたちで海へ戻っている。水の循環という自然の仕組みは実に見事である。

2) 国民全員が水を汚している

家庭の台所やお風呂、トイレ、洗濯などから出る生活排水が、水の汚れの大きな原因である。一軒の家から流れ出る排水はわずかでも、それが地域や市町村あたり、そしてひいては大陸レベル、地球規模でまとまれば想像もつかない大きな汚れとなってしまうのである。

3) 経済成長優先は何を招いたのか

商業やレジャー施設のための大規模な埋め立て、ダム建設、地下水の汲み上げ、工場排水、車の排気ガスや排煙に含まれる亜硫酸ガスやイオウ酸化物が大気中の水蒸気に触れて硫酸塩や硝酸塩に変化し、それらを大量に含んだ酸性雨が地上に降り注ぐ。雨水は土砂とともに大量の有機塩素系の農薬、化学肥料、除草剤、殺虫剤などの合成化学物質を土壌にしみこませ、地下水を汚染し、川まで運び、森林伐採や工場排水は沿岸地帯の環境破壊、水辺の生物や植物性プランクトンの生態系をも狂わせてしまった。

4) 水は地球の血液

広辞苑によれば「循環」とは「一回りして、また元のところに戻り、それを繰り返すこと」とある。つまり、循環とは流れることに価値があるのである。流れが滞ったり、澱んでいるような事では循環とは言えない。私たちのからだに流れる血液と同じなのである。血液はからだに必要な栄養や酸素を瞬時にして運ぶので、これがたった一瞬でも流れなければ致命傷となってしまう。そういう意味で、大昔から自然が作り出した流れともいうべき「水の大循環」は、だれにも邪魔されること無くスムーズに循環して欲しいものだが、残念ながら経済発展とともに人間の手によって様々な流れの妨げとなる障害がもたらされてしまった。

ますます健康を維持することが難しくなってきた時代、命の源である水環境は私たちの健康にも大きな影響を与えるのである。


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