第15章 危険な合成洗剤

家庭で洗濯に使用している合成洗剤液を四倍の水で薄めると、その中の界面活性剤の濃度は50ppm(0.005%)程度になります。(1回使用量=水30リットルに対し、洗剤20グラム。せんざいの40%が界面活性剤成分で、四倍の水で薄めると計算して)

この濃度では、メダカは数十分経つと苦しみだして、やがて死んでしまいます。メダカはえらから水中の酸素を取り入れて呼吸していますが、界面活性剤濃度が50ppmの水中ではえらの細胞が破壊され、血液中の浸透圧調節が不能になり、死に至ると考えられています。

実験動物の半数が、二十四時間以内にどのくらいの界面活性剤濃度で死ぬかという値をTLM値といいますが、メダカの成魚のTLM値は、陰イオン系界面活性剤のLAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)で6ppm、ふかしたばかりのメダカでは1ppmです。

日本の河川の多くは、界面活性剤濃度が1ppmを超えていることが報告されています。これではメダカが生きて、子孫を増やせる環境とはいえません。その上、農薬などの影響を考えると、このままでは日本の小川からメダカが消滅する日は近いのです。

1983年、横浜市戸塚区のいたち川で白く濁った洗剤が流れ込み、コイが100匹以上死んだ事件は、当時大きな話題になりました。横浜市公害研究所でNMR(核磁気共鳴分析)によって川の水を分析した結果、このコイの大量死はPOER(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)という界面活性剤が19ppm含まれていたことが原因とわかりました。

POERは、台所用合成洗剤やシャンプーなどに多量に配合されている非イオン系の界面活性剤です。使用量が増えている非イオン系界面活性剤ですが、水道法では水質基準が定められていません。

◆非イオン界面活性剤

直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)やアルキル硫酸ナトリウム(AS)が徐々に減り、ポリオキシエチレンアルキルエーテルや非イオン界面活性剤が増えています。

アルキルエーテルはベンゼン環がないため比較的生分解性は良いのですが、魚毒性は非常に強く、また皮膚吸収性はASの17倍ほどになります。このため横浜市戸塚区の川や埼玉の川では、魚が大量死する事件が発生したり、全国の川からメダカが消えつつあるのを助長しているとも言われています。

非イオン界面活性剤は、以前から外資系の会社が「薄めてつかえるからお得」と宣伝して、訪問販売などで売られていたものですが、これと同じ物を大手メーカーが使用をはじめたのです。皮肉にも外資系の商品が、不当に3~5倍高いことが明るみに出てしまった結果となりました。


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