第14章 川に流される大量の合成洗剤

通産省の統計によると、最近10年間の合成洗剤の販売量は年平均100万トンにのぼります。日本人一人当り年間9キログラム使用していることになります。四人家族なら、一日100グラムほどになります。

100万トンというと、ゴミ収集車(2tトラック)で50万台分、東京ドーム三個分にもなります。つまり、年間これだけの量の合成洗剤を河川に捨てているのです。

日本では下水処理場はまだ全世帯数の半分程度しか整備されていないので、合成洗剤は半分はそのまま水環境に捨てられています。その上に、下水処理場で処理されている半分も、十分に分解されないことがわかっています。

このままでは、河川にますます合成洗剤の残留量が増えるだけでなく、全国の湾や海の底にも蓄積されていくことなってしまいます。人家が多い都市の河川では合成洗剤の残存量が高く、たとえば多摩川では濃度は1~2ppmにもなっていると報告されています。

この濃度は、メダカも棲めないといわれる濃度で、実際、東京をはじめ日本中の河川で絶滅したか、極端にメダカの数が少なくなっています。自然の小川の改修、農薬などの影響とともに、合成洗剤がメダカを絶滅に追いやる原因のひとつともなっているのです。

野生のトキを取り戻すことはもう不可能ですが、ついこの間までいたメダカを私たちの身近な小川に呼び戻すことは不可能ではありません。

 一方石けんは、年間15万トンの販売量です。石けんは水環境に出ると、水の中のカルシウムと結びついてカルシウム石けんになりますが、このカルシウム石けんは、微生物によって分解されたり、小魚によって食べられたりして自然に消滅していきます。

 ですから、日本の川や海では、石けんの残存量は検出されないのです。


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川の浄化に関する活動について
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第10章 洗剤による水汚染について
第11章 河川の水質汚濁防止方法
第12章 排水に関する法規制
第13章 生活に川をとりもどすために
第14章 川に流される大量の合成洗剤
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