代表 富士村夏樹 講演録
■森林育成編 12. 竹を活用した古来の叡智
まず第一に炭をホームセンターまで行って購入していたんでは費用ばかりかかってしまうわけです。そこでまず、炭焼き窯を補助金で購入、炭焼きから始めなければならないこと。そして材料となる木材もやたらに木を切るわけにはいきませんので、間伐したり枝木を最寄りの山まで行って運ぶ作業も大変重労働になってしまいます。 しかもこの手の団体は女性が主になっているところが多く、力仕事なのに男性の協力が得られにくい。さらにやっと背負ってきた木材で炭焼きを始めると、近くの住民から「洗濯物が汚れるじゃないか」というお怒りもかってしまう。炭の定期的なメンテナンス、つまり定期的清掃や炭の総入れ替え作業、最後には補助金も途絶え、結局はいい水質になっても活動を断念せざるを得なくなってしまう・・・そんな理由で四~五年で消滅してしまうということがわかったのです。 このような活動は実に素晴らしいですが、今のように経済も混沌とし、そういう気持ちは充分にあってもなかなかボランティアに参加するだけの時間的な有余がない方もいらっしゃいます。ましてや小さなお子さんがいらっしゃるご家庭、共働きの家庭など、そういう気持ちがあっても参加することができません。 じゃあ、私達はどんなことをしてお役に立てるだろうか。そしてできれば、もっと横着に、といっては何なんですが、もっとさりげなく川をきれいにするアシストができないだろうか、と考えておりました矢先、たまたま私が北海道にいたときに、こんな素晴らしいものに出会ったのです。 それはこれです。(木の棒のようなものを取り出して)何かといいますと、皆様竹は良くご存知のことと思いますが、これはですね、北海道の千島笹という「笹」なんです。 竹とか笹というのは実に成長する速度が速いんですね。皆様一日にどのくらい伸びると思いますか?(会場からの声:11センチ、30センチ、70センチ)はい。今どなたかが仰いましたが、竹や笹というのは、一日に伸びる時は70センチ~一メートルも伸びるんです。もちろん一日1メートルのペースで伸び続けたら、一年で365メートル(笑)も・・・伸びませんね。最も成長する時でそのくらいということです。ぐんぐん伸びます。 そして先ほどのこの千島笹も同様に1メートル近く伸びます。で、皆様にもう一つ質問です。ではもし、竹を切らずにそのまま放置していたらどうなるか、どなたかわかる方いらっしゃいますか? これが大変興味深いんです。 実はですね、竹は生命力がとても強いので、もし伐採しなければ逆に周りのほかの植物を枯らしてまで生きようとするのです。したがって周りの植物が枯れてしますのです。広島に原爆が落ちて荒れ野原になった時、一番最初に出てきたのが竹なんです。とにかく竹の生命力は凄いんです。 そういう意味で、竹は適当なところで常に伐採してあげることが出来れば、むしろ周りの森林を育成することになるんです。森林の育成には竹を切りなさいということです。たまたま出会った北海道の千島笹、これは現地では植木の冬囲い用の支柱くらいにしか使われていませんでしたから、ほとんど全道に生息する千島笹はほとんどが伸び放題なんですね。 そのうちの一部でもゼロエミッションして、竹産業に貢献できればということで私どもは炭にするために伐採をしています。どんどん成長する竹は持続可能な重要資源です。昔は竹材を有効利用していましたから竹職人は無論、竹産業自体が繁栄していました。 昔は竹製品が沢山ありました。でも産業の発展と同時にプラスティックが普及し、今竹産業は衰退しきっています。ちょっと竹冠の漢字を思い出してみてください。例えば(ホワイトボードに書きながら)箱・筆・筒・笠・竿・籠・箒・笛・管・筍など沢山ありますね。 でもこれらの商品、今、百円ショップへ行けば何でも買えますね。 一見安いから良いようですが、石油から作られてプラスチック製であり、すべてゴミになります。ですから竹産業は元気がなくなってきます。竹職人、竹製品、こういう昔ながらの知恵というか文化は次の世代に残さなければならないと思うのです。安易なものに頼るのでなく、竹産業の復活は資源の点から見てもとても重要なんです。そのためには竹や笹を切ることが大切なんです。 この植物は北海道には広範囲に棲息していまして北海道以外には青森県の一部、長野県の一部を除き、他の地域にはありません。実質、北海道にしか棲息していないといってもいいでしょう。特に北海道の高いところ、寒冷地に棲息しています。非常に生命力の強い木なんです。 前へ 次へ | 環境にやさしいを超えた活動こそ、今…。 -川や森や大地が蘇る- ■水環境編 1. 健康と生活排水のつながり 2. きれいな水を作る洗剤誕生 3. 水の流れがわかるポスター 4. 水も飲めない子どもたち 5. 生活を楽しくアートしよう 6. 水の汚れの原因は? 7. 川や海を汚さないように 8. ゴミをなくすものづくり ■森林育成編 9. 天然の抗生物質青森ヒバ 10. 洗剤にヒバの能力を 11. 竹炭は地球を救う 12. 竹を活用した古来の叡智 13. 偉大な生命力をもつ「竹」 14. 備長炭の八倍の効果 15. 先人たちの知恵 16. ユニークな洗剤を広める 17. せっけんよりも安全 18. 環境にやさしいを超えた活動 19. 環境保全と福祉が一体となる 20. 廃油回収、井戸の寄付 21. 植物の浄化作用を雑貨に 22. 竹タオルの抗菌効果 23. 職人の技 24. 木のぬくもりとあたたかさ 25. かびが生えないヒバまな板 26. 伝統技術の継承 ■土壌改良編 27. 農薬を使わない防虫スプレー 28. 天然防虫スプレー誕生 29. シロアリ駆除に使われる農薬 30. 床下に使用される大量の農薬 31. 5000社もあるシロアリ業者 32. シックハウスと近代住宅 33. 青森ヒバでシロアリ防除 34. 住宅の健康診断 35. シロアリと阪神大震災 36. シロアリはゴキブリ科 37. 消費者が流通を変える 38. 害虫駆除業の閉鎖性 39. 生産者と消費者の橋渡し |