生活アートクラブの取り組み
「森林のフィルムパック」誕生。
OUR CHALLENGE ~私たちの挑戦~
「マイクロプラスチック」の問題を考えてみましょう
2020年7月からレジ袋の有料化がスタートしました。プラスチックごみを減らそうという取り組みですが、このレジ袋が全プラごみに占める割合はわずか数%ほどでしかありません。とはいえ、これを機に「プラごみはなるべく出さない!」と、私たち自身が意識を変えていきたいものですね。
皆さんもご存じのように、プラごみによる海の汚染は世界的な問題になっています。2050年には海の魚の量を上回るといいます。実は日本は一人あたりのプラスチック使用量が米国に次いで世界2位、生産量も世界3位というプラ大国なのです。オーストラリアの大学の研究チームによると、私たちはなんと毎週クレジットカード1枚分(5g)のマイクロプラスチック(※1)を摂取しているとか!
プラスチック自体は体外に排泄されるのだそうですが、添加されている化学物質や海の中でプラスチックに吸着する有害な化学物質が問題なのだそうです。これらがプランクトン→小魚→大きな魚→ヒトといった食物連鎖で私たちの口に入り、体内に蓄積されていくことになるとすれば大変なことです。欧州連合(EU)では、使い捨てのプラスチックの総量を削減しようと、2019年には企業への「拡大生産者責任」を強化しています。しかし、日本ではまだまだそのレベルには至っていません。そこでエコデパジャパンを運営する生活アートクラブではいち早く、脱プラの問題に取り組み、まずは商品包装をプラスチックから環境負荷の少ない「森林のフィルムパック」に変更することにしました。
※1 マイクロプラスチックとは、プラスチックが波や紫外線のエネルギーで砕け、5ミリ以下の小片になったもの。生分解性がないので、魚や二枚貝、鳥が摂取し、それをより大きな生物が摂取して生物連鎖を起こしていく
木から作られる「セルロースフィルム」に着目しました
お花やお菓子のラッピングに使われているセルロースフィルム(通称セロハン)が、木などのパルプから作られていることはご存じでしたか。20世紀にフランスで発明され、大正から昭和にかけては日本でも高級食品などの包装に活用されていました。しかし安くて便利な石油由来のプラスチックが登場すると、あっという間に取って代わられたのです。しかし、近年、プラごみ対策として、植物由来のセルロースフィルムが再びクローズアップされています。そのなかで私たちが採用したのが、イギリス製NatureFlex™(フタムラUK製)の包装用セルロースフィルム。環境保全についてきちんと考慮されていると判断したからです。
このセルロースフィルムは第一に、国際的な認証機関から生分解性を認められた資材を使っていることが挙げられます。管理された森林からの木材パルプ(再生可能な資源)を原料に作られているのです。
第二に、100%バイオマス(※2)原料のフィルムをベースに使用しているため、地球温暖化の原因とされているCO₂の排出量を抑えることにつながります。第三に、土壌中で微生物の働きによって水とCO₂に分解されることが証明されています。つまり家庭菜園に生ごみと一緒に埋めても大丈夫なのです。(下図参照)
※2 再生可能な、石油などを除いた生物由来の資源のこと
森林から伐採された木材チップなどからセルロース(繊維)を取り出し、パルプにしてフィルム化したNatureFlex™を使用した「森林のフィルムパック」。これを家庭の生ごみとして土壌に埋めると、微生物の酵素によって水とCO₂に生分解される。焼却した場合は、CO₂を排出することになるが、森の木が光合成する際に吸収するCO₂との相殺で、全体のCO₂量は抑制されることになる。これがカーボンニュートラルという考え方
以上のことから「森林のフィルムパック」は、環境に配慮された注目すべき素材の一つだと言えますが、まだまだ完全無欠というわけではありません。たとえば、この袋は、一般社団法人日本有機資源協会(JORA)の《バイオマスマーク90》を取得していますが、バイオマス度100%ではありません。袋状に加工する際に、石油由来の樹脂を使用せざるをえなかったからです。今後、この樹脂を植物性由来のものにステップアップしていくことも私たちは視野に入れています。
現在、「森林のフィルムパック」は自社製品(靴下や手袋などのオーガニック衣類)から順次、包装を替えていますが、状来のプラスチック包装袋に比べると、10倍ほどのコスト高。しかし、より良い製品をつくるためであれば、他社では難しいことでも果敢に取り組み、自ら小さな一歩を進めていきたいと考えています。