積極的水環境改善2大活動
森林保護と育成を兼ねた竹炭による河川の浄化活動
森林保護と育成を兼ねた竹炭による河川の浄化活動
● 生活排水に気を付ける一方、河川の積極的浄化を目的として、笹または竹炭による浄化について期待している。
● 周知のとおり、木炭や竹炭利用の浄化メカニズムは、高い吸着性能により汚染物質を取り除くことと、吸着された汚染物質を微生物による分解によって無害化することである。
● 森林保護の側面から定期的伐採を効果的にするため、ゼロエミッションとしての竹材利用に注目し、水汚染物質に対する吸着性の高い竹炭をミクロに粉砕した竹炭粉を配合したせっけんによる家庭排水の負荷軽減を各家庭単位で実践できる商品開発を行なうことを目的とする。
八王子「浅川地区環境を守る婦人の会」では1985年から6年に亘り、木炭による河川の水質浄化実験を20回記録した。この他、静岡県川根町の川根中学校、福岡県久山町の実験など、このような運動は全国各地で行なわれ、また実績をあげている。
八王子「浅川地区環境を守る婦人の会」が行なった実験は、浅川の上流から下流までの各ポイントに、約120キログラムの木炭を細かく砕いてたまねぎの入っていた網の袋に入れ、汚れが最もひどいドブに長さ10mにわたって設置し、年に数回水質調査を行なったものである。これにより浅川の水質は回復したと言われてきた。
しかしながらこのような活動は、木材探しに始まり、炭焼きから窯だし、仕掛け作り、川の各ポイントへの設置、清掃作業など定期的なメンテナンスも伴い、大変な手間と時間を要するものとなってしまうのである。
したがって、せっかく貴重な実験結果が出ていたとしても、長続きしなかったりする場合もあるようだ。またこのような活動は、一部の環境に熱心な人たちによってのみ行なわれている感があり、一般家庭人の参加が積極的に行なわれていない現状のように思えるのである。
当生活アートクラブでは、従来からゼロエミッションとしての竹炭の特性に注目しており、これらが河川の水質浄化に何らかの目的で利用されることを期待し研究してきた。そして川の浄化を目的として、家庭に居ながらにして誰もがもっと簡単に参加できる方法は無いものかについて考えて来た。
そこで私がかねてから考えていたこと、それは竹炭を細かく粉砕し、家庭排水と一緒に流してしまう方法である。
この方法はいくつかの点で相乗効果が期待できると私は見ている。
粉砕の粒度は数十ミクロンという大きさにし、これを合成界面活性剤を使用していない生分解性の高いせっけん洗剤に配合する。もともと炭はアルカリ性なので洗浄力があり、食器洗浄には適しているので、特に台所用の食器洗いとして使用すればよい。生活アートクラブでは、このせっけんについてもすでに特許の申請をしている。
炭については木炭より竹炭のほうが、その特性である吸着性や森林保護の点で都合がよいと考えている。
北海道産の根曲がり竹(通称:千島笹)炭は、その吸着性の点でさらに効果的と考えている。根曲がり竹炭は木炭の約7倍の吸着力があるといわれているからだ。
家庭排水における有害化学物質の吸着を目的としているので、吸着力に富んだ素材はさらに好ましいと考えたのがその理由である。また、細かく粉砕することにより、固体に比べはるかに表面積が大きくなることで、炭の持つ特性である「孔」がより早く吸着性を発揮することができるのである。
この方法により、家庭の排水口から各市町村の浄化センター(下水処理場)までの下水道管内において、前記の川辺に100キログラムに及ぶ木炭ネットを設置したと同様に、有害化学物質を吸着し、河川の浄化をサポートできるのではないかと考えたのである。
もともと下水道管の中は、人の手が加えられない地中のことだから、管の内部で粒度の細かい炭が汚水と一緒に浮遊しながら下水処理センターまでゆっくり流れて行くことが期待できるためである。
これなら川辺に設置された木炭設置場所を、汚水が僅か一瞬で通過することより、もっと効果的に、しかも人の手の加えられない下水道の管内で充分な炭の役割が果たせると期待できるのではないか。
細かく粉砕された炭は浄化処理センターまでの道のりの間に、有害化学物質やその他の汚染物質を吸着し、さらに竹炭の孔に住みつくとされる放線菌などの微生物が着生し、有害化学物質の分解・浄化をも果たしてくれるかもしれない。
浄化センターにたどりつけば、従来の活性汚泥法などの処理システムにかけられ、既に汚染物質の吸着した粉砕炭を取り除けばいいのである。
もともとこの方法は、簡単に言えば活性炭による汚染物質の吸着を図る作業であるから、その方法を下水処理施設のもっと手前の段階、つまり家庭の排水口から実施してしまおうという仕掛けなのである。
この処理方法によって汚泥量が増加するという点が問題ではあるが、それについては何らかの二次活用を考慮することが好ましい。
むしろ近年、浄化処理センターへの負荷が重く、さらに高度な処理システムの導入などが各自治体で検討されており、終局的にはこれにより、各家庭の水道料金に跳ね返ってきてしまうことを考えれば、下水処理施設の負荷軽減という大きな役割を微力ながら支援することができるのではないか、と私は考えている。
これなら休日を返上し、心有る奉仕の精神を持った人たちの多大な時間と労力をかけずに、もっと合理的に、各家庭で手軽に実践できる地域の川の浄化運動に積極的に参加できるのではないだろうか。
このような取り組みにより、それぞれの家庭において、ちょっとだけ「水」について子供たちと語り合う機会があれば、お台所がまさに生きた家庭学習の場になるに違いない。
当生活アートクラブでは、これまでに記してきた食廃油回収による資源の保全とリサイクルせっけん運動により家庭排水の汚染防止を目的とすること、また下水処理センターの処理負荷軽減の実践、及び竹炭粉を利用した河川の積極的浄化を具体的実践として、これからの新たな川の浄化をテーマに積極的な活動を推進して行きたいと考えている。
(生活アートクラブ 代表 富士村夏樹)