シロアリ被害の例

 シロアリの被害は極めて広範囲に及び、気づいたときには被害がかなり進行していることが多いと言われています。下記の写真で、その一例をご紹介します。

土台と柱の被害
 シロアリは、地中から、建物に侵入してくることが多いので、まず土台や床束、柱などの下部が食害されます。柱が浮いたり、傾いたりして、地震や台風の際、思わぬ大被害を受け、とても危険です。
小屋組の被害
 シロアリは気づかぬうちに柱や壁などの内部を食い進み、ときには被害が天井裏の小屋組にまで及びます。
床板の被害
 床下から侵入してきたシロアリは、床板を食い荒し、その上にある畳や家具類まで喰害します。
鉄筋コンクリート
造校舎の床板の被害

 最近、鉄筋コンクリートやブロック建造物の被害が増えています。コンクリート建造物でもシロアリは一度侵入すると、内部の木材や家具などを食い荒します。
モルタル壁内部の被害
 モルタルやコンクリートブロック壁内部は、暗くて温暖多湿なので、シロアリに食害されやすい場所のひとつです。
新建材の被害
 シロアリは木材だけでなく、プラスチックや合成ゴム製の新建材も加害し、特に発泡スチロールや発泡ポリウレタン系の断熱材は、木材より好んで加害されます。
畳の被害
 気づかぬうちに、箪笥や家具類の下の畳がシロアリに喰害されていることがあります。
設計図の被害
 建築設計事務所で保管中の貴重な設計図がシロアリに喰害されたことがあります。
書籍の被害
 本や書類も押し入れに入れたり、壁に接して積み重ねておくと、シロアリの餌食となります。
ケーブルの被害
 鉄道沿線や建物内敷設のケーブル・電線類がシロアリに喰害されて、運転事故や電気、通信障害を引き起こすこともあります。

 使用させて頂いた写真は、日本シロアリ対策協会のパンフレットより拝借しました。

誰にでも出来るシロアリ発見法
 シロアリの生息地であれば、シロアリ被害はどこででも起きる可能性があります。シロアリは風呂場・台所・洗面所・便所など比較的暖かく、水をよく使うところに多く発生します。建物をシロアリから守るには、早期発見がなによりも重要です。シロアリがついていないかは、素人でも次の手掛かりで簡単に調べられます。

(1)蟻道
 シロアリは地中から土でトンネル(蟻道)を作って建物へ侵入してくることが多いので、時々建物の床下や周辺を調べて基礎や束石・土台などの表面に蟻道がついていないかを確かめましょう。
(2)蟻土
 シロアリは、風や光を嫌い適当な湿度を保つために、木材の割れ目や継ぎ目に排出物や土砂を運んできて詰めたり、盛り上げたりします。
(3)食痕
 シロアリは木材の軟らかい春材部を好んで食べ、硬い秋材部を食い残しますので、木口面では、年輪に沿って、同心円状の食痕を示します。シロアリは明るいところでは木材の表層を残して、内部だけを浸食しますので、木材の表面から強く押したり、ドライバーでほじくると簡単に穴があいたり壊れたりします。シロアリ被害が進んだ木材は内部が空洞になりますので、木材をハンマーでたたくと空洞音がします。

(4)建物の変状
 シロアリ被害が進んだ建物では、家の中を歩くと、畳や床板が何となくくぼむ感じを受けたり、柱が下がり、棟や軒の稜線が波を打ち、屋根瓦がずり落ちたり、ふすまや障子、雨戸などの立て付けが悪くなったりします。

(5)羽アリ
 羽アリの群飛期は、シロアリが人前に姿を現す唯一の時期ですので、シロアリ発見の絶好のチャンスです。群飛の時期や時刻に注意していれば、シロアリの種類の判別にも役立ちます。ヤマトシロアリは4~5月(ただし沖縄2月、東北・北海道6月頃)の昼間に、イエシロアリは、6~7月の夜に群飛して電灯に飛来します。アメリカカンザイシロアリは6~9月の昼間に少数ずつ何回も群飛し、ダイコクシロアリは5~8月の夜に少数ずつ群飛して電灯に集まってきます。

(6)カンザイシロアリの糞
 アメリカカンザイシロアリやダイコクシロアリは乾燥した木材だけを喰害し、被害材の外に糞を排出します。被害材の下に乾いた砂粒状の糞がたまり、数10倍に拡大して見て、真ん中がへこんだ米俵状をしている場合は、幹材シロアリの被害です。


木材の防腐とシロアリ
 木材を不適切な環境条件下で使用すると、風雨・塵芥・害虫による喰害・微生物による腐朽などによって、急激に劣化します。 
 微生物(腐朽菌・変色菌・表面汚染菌・その他の最近類)は、特殊な酵素を分泌して木材の化学成分を分解し、微生物自身の栄養源として摂取してしまいます。
そのため、短い期間で木材の組織構造が破壊され、結果木材に形態的損傷と激しい強度低下が生じます。これが木材の腐朽です。
 木材を腐朽させる微生物が発育する環境と、シロアリが好む環境は、条件が類似していると言われます。特に、木造建築物においては、木材を腐朽させる菌類の繁殖がシロアリの活動に適した環境を作り、シロアリの害も発生してしまう場合が少なくないと言われています。
 よって防蟻処理剤は、防蟻効力だけではなく、防腐効力を具備する製品が望ましいといえるでしょう。

シロアリ喰害と地震被害
 既存建物のシロアリ被害に伴う駆除被害額は、火災被害額を上回ると言われています。例えば一つの県だけでも年間数万棟を超えています。全国規模での算出をすればその被害件数は計り知れないほどとなるように、防蟻措置は必須事項と考えられます。
 阪神大震災の倒壊家屋調査(大阪市立大・宮野助教授、土井講師など)が900棟以上の木造家屋を対象に震度7の地域である神戸市東灘区と、淡路島・北淡町で実施されました。その結果、倒壊被害程度とシロアリの被害や腐朽菌による腐食との相関関係が明らかになっています。
 調査によると、東灘区では、シロアリ被害腐食「あり」の218棟で、住宅専用や店舗兼用などの建物用途に関係なく、全壊が93%と圧倒的で、半壊は6%であった。これに対し、シロアリ被害腐食「なし」の421棟では、全壊25%、半壊23%、軽微・無被害が52%と被害が少なくなっています。
 地震対策として、シロアリや球菌による腐食の予防対策が、被害を食い止めるシロアリ駆除工事がとても大切といえます。